行政書士試験独学勉強法

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【解説】平成25年度の過去問第32問

   

 選択肢ごとに登場人物の法律関係が異なりますので、混乱しないように正確に法律関係を読み取りましょう。問われていることは、基本的なことなので正確に設問を理解できれば解ける問題です。

 

正解 2

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ア解説 ×  時効の援用権者の問題

 「当事者」(民法145条)が時効を援用することができます。「当事者」とは時効によって直接利益を受ける者をいいます。そして、判例は借地上の建物の賃借人は、土地の取得時効の完成によって直接利益を受ける者ではないから賃貸人による敷地所有権の取得時効を援用することができないとしています。(最判昭和44年7月15日)
 よって、建物賃借人たるCは「当事者」に当たらずAの時効を援用できない。

 

イ解説 ○  賃貸人の地位の移転の対抗要件の問題

 「本件宅地の賃借人としてその賃借地上に登記ある建物を所有する上告人は本件宅地の所有権の得喪につき利害関係を有する第三者であるから、民法一七七条の規定上、被上告人としては上告人に対し本件宅地の所有権の移転につきその登記を経由しなければこれを上告人に対抗することができず、したがつてまた、賃貸人たる地位を主張することができないものと解するのが、相当である」(最判昭和49年3月19日)
 すなわち、建物所有者たる賃貸人の地位が第三者に移転した場合、その第三者は登記をしなければ賃借人に賃貸人地位を主張できません。
 

ウ解説 ×  第三者弁済の「第三者」の問題

 民法第474条1項は「債務の弁済は、第三者もすることができる。」と規定し、同条2項で「利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。」と規定していることから、利害関係を有する者は債務者に代わり弁済することができます。
 そして、「利害関係を有する者」とは法律上の利害関係を有する者をいいます。
 借地上の建物賃借人Cは、土地賃借人Aが賃料を支払わず土地賃貸借契約が債務不履行解除されてしまうと、土地の所有者Bから土地明け渡し請求をされることになり、土地から出ていかなければならない立場に置かれてしまいます。したがって、借地上の建物賃借人は法律上の「利害関係を有する者」に該当します。

 

エ解説 ○  賃借人の承諾の問題

 民法第612条は「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。」と規定しいます。借地上にある建物を第三者に譲渡する場合も「賃借権を譲り渡し」に該当するため、賃貸人の承諾が必要となります。

 

オ解説 ○  土地賃貸借契約の合意解除の効力の問題

 建物所有目的の土地賃貸借は、土地賃貸人および賃借人はその土地上に建物が建てられそこに人が住むこと、また第三者にその建物を賃貸することが当然予想されかつ認容しています。したがって建物賃借人は、建物の使用に必要な範囲において、その敷地の使用收益をなす権利を土地所有者及び土地賃貸人に対して有します。
 また、建物賃借人の土地賃貸人に対し主張し得る権利は、土地賃借人がその有する借地権を放棄することによって勝手に消滅させることはできません。
 土地賃貸人とその賃借人との合意をもつて賃貸借契約を解除した本設問のような場合には、土地賃借人において自らその借地権を放棄したことになりますから、建物賃借人に合意解除を対抗できません。

  平成25年度の過去問第32問

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