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【解説】平成25年度の過去問第34問

      2015/03/20

ポイント 
公序良俗 贈与 不法原因給付

民法90条(公序良俗)
 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

民法550条(書面によらない贈与の撤回)
 書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。

民法708条(不法原因給付)
 不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。

 

正解 2

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1解説 ×

 書面によってなされた贈与は撤回できない(民法550条)ですが、AとBは不倫関係を維持する目的で甲建物の贈与契約をしているから、民法90条により本件贈与契約はそもそも無効です。
 よって、AはBからの甲建物の引き渡し請求を拒むことができます。

 

2解説 ○

 AはBに対して未登記の甲建物を引き渡しています。未登記建物については引渡しにより終局的な給付が認められるので「給付」(民法907条)に該当します(最大判昭和45年10月21日)。
 したがって、AB間の贈与契約が民法90条で無効であっても、不法原因給付(民法907条)によりAは「給付した者」に該当し、Bに対して甲建物の返還請求はでません。

 

3解説 ×

「建物の所有者のした贈与に基づく履行行為が不法原因給付にあたる場合には、贈与者において給付した物の返還を請求できないことの反射的効果として、右建物の所有権は、受贈者に帰属するに至ると解するのが相当である。」(最大判昭和45年10月21日)

 BはAが返還請求できないことの反射的効果として、甲建物の所有権がBに帰属します。
 そしてAは甲建物について無権利でA名義の保存登記をしたにすぎず、甲建物の所有権はBに帰属しているので、AはBに対して甲建物の返還請求はできません。

 

4解説 ×

 不法原因給付に基づく既登記建物の書面によらない贈与において、給付がなされたというには、引渡しのみでは足りず、所有権移転登記手続がなされていることをも要します(最判昭和46年10月28日)。

 Bは甲建物について移転登記を経由していないので、甲建物がAからBへと引き渡れても「給付」(民法708条)に該当せず所有権はAにあります。

 したがって、AはBからの移転登記請求を拒むことができる。

 

5解説 ×

 「 消費貸借成立のいきさつにおいて、貸主の側に多少の不法があつたとしても、借主の側にも不法の点があり、前者の不法性が後者のそれに比しきわめて微弱なものに過ぎない場合には、民法第九〇条および第七〇八条は適用がなく、貸主は貸金の返還を請求することができるものと解するのを相当とする」(最判昭和29年8月31日)

 すなわち、「不法な原因が受益者についてのみ存したとき」(民法708条)でなくても、公序良俗に反する契約であっても、当事者の一方の不法性が他方より微弱である場合、不法性が微弱な者には民法第90条および第708条は適用がなく、他方に返還請求できます。

 Aの不法性はBより微弱であるため、Aに708条は適用されず、Bに対して甲建物の返還請求できます。

 

おさらい

 不動産贈与における「履行の終わった」(民法550条)とは、引渡し、または移転登記をした場合をいいます。

 不法原因給付における「給付」(民法708条)とは、未登記不動産については引渡し、既登記不動産については登記を要します。

平成25年度の過去問第34問

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