【解説】平成25年度の過去問第30問
ポイント
詐害行為取消権の対象となる行為 遺産分割協議 相続放棄 財産分与 取消権の範囲
正解2
1解説 ×
遺産分割協議も詐害行為として詐害行為取消権の対象となります。遺産分割協議も財産権を目的とする法律行為に該当します。
「共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当である。 けだし、遺産分割協議は、相続の開始によって共同相続人の共有となった相続財産について、その全部又は一部を、各相続人の単独所有とし、又は新たな共有関 係に移行させることによって、相続財産の帰属を確定させるものであり、その性質上、財産権を目的とする法律行為であるということができるからである。」最 判所平成11年6月11日判決(出典:判例タイムズ1008号117頁)
2解説 ○
相続放棄は詐害行為 取消権の対象になりません。詐害行為は積極的に債務者の財産を減少させる行為であることが必要です。また、相続放棄は身分行為であるから、他人の意思によ る強制を受けるべきではないことから、債権者の意思により相続放棄の取消をなされるべきではないからです。
「相続の放棄のような身分行為につい ては、民法四二四条の詐害行為取消権行使の対象とならないと解するのが相当である。なんとなれば、右取消権行使の対象となる行為は、積極的に債務者の財産 を減少させる行為であることを要し、消極的にその増加を妨げるにすぎないものを包含しないものと解するところ、相続の放棄は、相続人の意思からいつても、 また法律上の効果からいつても、これを既得財産を積極的に減少させる行為というよりはむしろ消極的にその増加を妨げる行為にすぎないとみるのが、妥当であ る。また、相続の放棄のような身分行為については、他人の意思によつてこれを強制すべきでないと解するところ、もし相続の放棄を詐害行為として取り消しう るものとすれば、相続人に対し相続の承認を強制することと同じ結果となり、その不当であることは明らかである。」(最判昭和49年9月20日)
3解説 ×
設問は財産分与が原則詐害行為取消権の対象となるとしているが、判例は財産分与が不相当に過大な場合に詐害行為になるに過ぎないとしている。
「離婚に伴う財産分与は、民法768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為とはならない。」(最判昭和58年12月19日)
4解説 ×
詐害行為取消権の範囲は取消権者(債権者)の債権額の範囲に限られます。
5解説 ×
債務者が金銭の受取を拒んだ場合、債権者の詐害行為取消権が意味を無くしてしまうので、債権者は直接第三債務者から金銭を受け取ることができます。
今回の問題は超メジャーな問題といえます。必ず正解しなければならない問題です。 詐害行為取消権は債務者の責任財産を保全する制度です。どのような要件のもとに行使できるか確認しておく必要があります。
関連サイト