【解説】平成25年度の過去問第28問
2014/07/08
正解 1
今日の問題は取得時効の問題です。
ポイント
時効取得の効果、取得時効の起算点、対抗関係、取得時効を主張するための対抗要件としての登記の有無、背信的悪意者の判断
1解説 ○
取得時効は原意取得ですから、取得した物に付された制限は消滅してまっさらな状態の物を取得することが原則です。
「不動産の取得時効の完成後、所有権移転登記がされることのないまま、第三者が原所有者 から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合において、上記不動産の時効取得者である占有者が、その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続したときは、上記占有者が上記抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、上記占有者は、上記不動産を時効取得し、その結 果、上記抵当権は消滅すると解するのが相当である」最高裁平成24年3月16日判決(金融・商事判例1391号13頁)
2解説 ×
不動産の取得時効は、前主に対しては登記がなくても対抗できます。時効が成立前に真の権利者が変動しようとも、時効成立直前の真の権利者が前主になります。
「不動産の時効取得者は、取得時効の進行中に原権利者から当該不動産の譲渡を受けその旨の移転登記を経由した者に対しては、登記がなくても、時効による所有権の取得を主張することができる。」(最判昭和41年11月22日)
3解説 ×
設問前半部分。
時効取得後に真の権利者から当該不動産を譲り受けた者と時効取得者は、対抗関係になるため時効取得者が譲受人に対抗するためには登記が必要です。よって、前段部分は正しいです。
「時効により不動産の所有権を取得しても、その登記がないときは、時効完成後旧所有者から所有権を取得し登記を経た第三者に対し、その善意であると否とを問わず、所有権の取得を対抗できない。」(最判昭和33年08月28日 )
設問後段部分
後段部分は誤りです。
「不動産の取得時効が完成しても、その登記がなければ、その後に所有権取得登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗しえないが、第三者 の右登記後に占有者がなお引続き時効取得に要する期間占有を継続した場合には、その第三者に対し、登記を経由しなくとも時効取得をもつて対抗しうるものと 解すべきである。」(最判昭和36年07月20日)
4解説 ×
時効の起算点は占有開始時です。よって誤りです。
「取得時効完成の時期を定めるにあたつては、取得時効の基礎たる事実が法律に定めた時効期間以上に継続した場合においても、必らず時効の基礎たる事実の開 始した時を起算点として時効完成の時期を決定すべきものであつて、取得時効を援用する者において任意にその起算点を選択し、時効完成の時期を或いは早め或 いは遅らせることはできない」(最判昭和35年7月27日)
5解説 ×
取得時効完成後の「第三者」に時効取得を対抗するためには登記が必要です(177条)。しかし、背信的悪意者は「第三者」に該当しません。背信的悪意者と言えるためには多年にわたる占有継続の事実を認識していることが必要です。
「取得時効の成否については,その要件の充足の有無が容易に認識・判断することができないものであることにかんがみると,乙において,甲が取得時効の成立 要 件を充足していることをすべて具体的に認識していなくても,背信的悪意者と認められる場合があるというべきであるが,その場合であっても,少なくとも,乙 が甲による多年にわたる占有継続の事実を認識している必要があると解すべきである」(最判平成18年1月17日)
設問を早く理解するコツ
設問の文章は長いですが、問われている状況を理解すれば基本的な問題です。誰と誰との関係が問題となっているかを読み取ることを意識しましょう。
登場人物をチェックしながら読むクセをつけることが、設問を正しく早く読みとるコツです。
取得時効の起算点
占有開始時
時効取得の効果
取得時効の完成によって、占有者は占有物の所有権を取得します(民法162条)
時効の効力は、時効の起算日までさかのぼって発生します(民法144条)
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